居場所アソシエーション訪問取材「(特非)居場所そら(第17期福祉たすけあい助成団体)」

夏の太陽が照り付ける7月の水曜日、NPO法人居場所そらが行う「そらカフェ」(子どもの居場所支援活動)を訪れ、代表の水信理恵さんに話を伺いました。横浜市立橘中学校(全校生徒700名)の校門を入ると、左手にある建物の2階には格技場があり、その1階入り口に「そらカフェ」の手書きのすてきな看板がありました。(取材:桜井 薫)

 

放課後の居場所 「そらカフェ」は、今日も満席

横浜市立橘中学校では、 毎週水曜日の放課後から最終下校時刻までの間、「そらカフェ」がオープンしています。中学生の居場所って意外とない、放課後、友達と過ごす場所があったらいいな!という声に応えてできたフリースペースで、授業や部活が終わってから家に帰るまでの時間、気軽にのんびり過ごすことができます。橘中学校の生徒であれば、申し込み不要でいつでも入退室OKというシステム。受付で名前を書いたら、友達やスタッフとのおしゃべり、読書、ゲーム、宿題など思い思いに過ごせます。(部屋にはジグソーパズル、カードやボードゲーム、コミック等が常備されていました) 毎回、入れ替わりで100名くらいの利用があります。

取材した日も、おしゃべりに夢中なグループや「人生ゲーム」で盛り上がるグループ等で大盛況。入口の看板には「只今、満席です」の札がかかっていました。参加していた一年生は「とても楽しい、友達と毎週利用している」とのこと。入学して3か月余り、学校に慣れるのにも一役かったでしょう。

 

特定非営利活動法人となって、活動のウイングを広げる

「そらカフェ」「特定非営利活動法人 居場所そら」が運営しています。代表の水信さんは元PTA会長。2020年から橘中学校地域学校協働本部(※)として、学校に行きづらい子どもたちの居場所の開設やその保護者の集いの場を提供する活動をしていました。2022年には、さらに活動の領域を広げ、継続的なものにするために特定非営利活動法人を設立。現在、その活動は地域の子どもや保護者が参加できる「土曜日そらカフェ」や、学習支援「橘塾」、「人生講座」(子どもたちがいろいろな職業の人のお話を聞く)、防犯・美化活動として、学校の「花壇整備」、「わんわんパトロール」(愛犬の散歩をしながら地域見守り)、地域振興・健康増進活動や近所のお寺の境内を借りての子ども食堂の開催など、多岐に広がっています。こうした多様な活動を支えるのは、20名ほどのスタッフ。PTA役員経験者が多く関わり、会計、広報等各々得意な人が担当しています。

 

合言葉の「地域で地域の子どもを育てよう」をさらに広げたい

 「地域で地域の子どもを育てよう」立ち上げ当初からの合言葉です。地域の様々な団体や個人のつながりを広げて、めざした姿が形になってきているのがわかります。校外であったときにも子どもたちから気軽に声をかけてくれます。ただ、放課後の「そらカフェ」や「橘塾」に参加できるのは橘中学の子どもたちだけ。他の中学の子どもたちも来られるように和田町駅付近にも拠点をつくりたいというのが水信さんたちの今後の目標です。

 

小学校を卒業すると学童保育や児童館など放課後の受け皿が急になくなります。学校を中学生が安心して集まれる居場所として活用したいと考える人は各地にいます。「居場所そら」の活動が一つのモデルとして共有され広がっていくことが望まれます。   

 

地域学校協働本部(※)  

地域学校協働活動とは、地域の大人、学生、PTA、NPO、民間企業、機関等の幅広い地域住民の参画を得て、地域全体で子どもたちの学びや成長をささえると共に、「学校を核とした地域づくり」を目指して、地域と学校がパートナーとして連携・協働して行う様々な活動。地域学校協働本部は、より多くの地域住民、団体などが緩やかなネットワークを形成し、地域学校協働活動を推進する体制。