新型コロナ対応緊急応援助成・第2次助成団体訪問取材①(地域食堂みんなでごはん、ジュピのえんがわ)

地域食堂みんなでごはん & ジュピのえんがわ

7月11日(土)に「地域食堂みんなでごはん」のフードパントリーの活動を取材した。フードパントリーの会場は金沢区富岡東の住宅地の中にある居場所「ジュピのえんがわ」。
「みんなでごはん」のメンバー5人にお話を伺っていたところ、ジュピのえんがわの代表の 高橋秀子さんにもお会いすることができた。以下は両団体の訪問取材記事である。

Ⅰ.地域食堂みんなでごはん

「みんなでごはん」の設立は2018年1月。代表の三上千代子さんは学童保育の指導員(支援員)として地域の保育を経験していた。こどものつながりで5人のメンバーが集まり、「みんなでごはん」を立ち上げた。学童保育のつながり、PTAのつながり、ご近所のつながり、5人がそれぞれ何らかの繋がりあり、この活動を立ち上げることになった。活動は基本5人で行っているが、手が足りないところは地域の方々に助けてもらっていると言う。
場所は三上さんがスタッフとして参加している「ジュピのえんがわ」。月1回第2土曜日に開催している。こども、母親、高齢者などに参加を呼びかけ、毎回20人~30人の参加がある。そのほかに、地域ケアプラザでも隔月に開催している。地域ケアプラザは偶数月の第4土曜日の開催だ。 新型コロナの影響で2/28に開催した『第35回みんなでごはん』で活動が一旦途切れてしまった。3月に入って小学校も休校となった。このまま休止でいいのか、悩んだ末に、フードパントリーとして、食品の配布活動から始めることにした。幸い近くにフードバンクかながわの事務所・倉庫があり、食料品を提供してもらうことができた。休止から2ヶ月、衣替えして活動を再開した。この食品配布活動は『みんなでおすそわけ』とネーミングした。
お弁当配布活動は『みんなでおうちごはん』だ。今回のお弁当配布では「照や」さん(南区井土ヶ谷の飲食店)の協力を得た。予約は電話で行う。受注担当は三上代表。予約日は二日、予約時間は枠を決めずに随時とした。今回はお弁当を70食用意、プラス『みんなでおすそわけ』も行う。食材は、青りんごジュース、牛乳パック、サバイバルパンなどだ。
3密対策で、受け渡し時間を少しずつずらした。開始11時前から、三々五々、お弁当を取りに来る人が現れた。受け渡し場所はまさに縁側を介して。こどもと父親、子どもと母親、一人暮らしと思しきおばあさん等次々に来る。メンバーは一人ひとりに声をかけ、近況を聞き取る。この日正午ごろ一時雨の予報だったが、始まる11時には強い日差しが照りつけるほどになった。

☆後日、代表の三上千代子さんに今後の活動について聞く機会がありました。
以下は三上さんからのメッセージです。

誰も予期しなかった事が起き、大人も子どもも戸惑いを隠せない状況になっています。
みんなでごはんは、参加者募集のチラシには、どなたでも!と謳っています。
どのような環境に置かれた人でも、みんなで同じごはんを食べたり、おしゃべりしたり、楽しみながら創るみんなの居場所です。
 またみんなでごはんができる日を楽しみに、今は、飲食店さん、フードバンクかながわさんにも、ご協力をいただきながら、地域の皆さんと共に、元気よく活動していきたいと思います。

Ⅱ.ジュピのえんがわ

ジュピは犬の名前だ。20数年前、高橋秀子さんは金沢区並木の公団アパートに住んでいたそうだ。当時ペットOKの団地は少なく、高橋さんの団地もNGだった。高橋さんの息子さんはアウトドアサークル活動(サークル名はジュピタークラブ)を行っており、或る時山に行き、川辺で捨て犬を拾った。家に連れて帰り、暫く置いておくことになったが、ひと月経ち、二月経ったが、対策に妙案なし。そこで家族会議を行い、現在お住まいのある富岡東に一戸建てを購入、引っ越すことにしたそうだ。
代表の高橋秀子さんは、越してすぐ、家の庭にプレハブを建て(夫が電気関係の仕事でプレハブくらいは朝飯前)、「駄菓子屋」を始めた。地域の人々の関係が薄れ、子ども達の遊ぶ声も聞かない。「駄菓子屋」は子ども達の社交の場であり、お金の遣い方を学ぶ場でもある、そこで駄菓子屋をやることにしたそうだ。高橋さんのお住まいの地域は戸建て住宅の古い地区、近年は高齢化が進んでいる。駄菓子屋は13年ほどやっていたそうだが、周辺にマンションが建設されるようになり、子ども達がたむろする場所もだんだんと無くなっていく。そこで已む無く駄菓子屋を閉じることにした。
高橋さんは前々から、居場所に関心があったそうだ。ちょうどこの頃、近所の空き家を使わないかという話があった。その家は5年くらい前から人が住んでいなかったそうであるがそれと気が付かずにいた。大家さん(鎌倉市在住)と話すと、当分壊す予定はないとのこと。月5万円、5年契約で借りることで話をすすめた。しかし、築80年。耐震診断も必要だし、リフォームも当然必要となる。 高橋さんは富岡東に引っ越してきてからはジュピの散歩を通じて犬友達が出来、地域の様々な人と知りあいになった。町内会の役員の方やシニアクラブとも懇意になった。
 そこで、高橋さんと夫、犬友達や知り合い6人で発起人会を立ち上げた。金沢区は独自の地域活性化計画として「金沢区お茶の間支援事業」に取り組んでいた。居場所づくりを3年間に亘って助成で支援しようとする制度だ。高橋さんは、この支援事業に手を挙げ、リフォーム資金として活用することとした。初年度150万、2年目50万、3年目50万の助成を得ることができた。 オープンは2016年3月7日。居場所の名前はずーと前から決めていたそうだ。『ジュピのえんがわ』である。現在ジュピのえんがわの運営は運営委員会を設置して行っている。運営委員会は設立発起人6人と、地区社協会長・事務局長、町内会長と民生委員・主任児童委員、ケアプラザ担当職員の9人、全15名である。スタッフは20人、全員無償ボランティアである。スタッフの最年長は82歳。みんなが少しずつ手を出して、無理のない運営をするというスタイルを取っている。
ジュピのえんがわのメニューは多彩だ。まず、駄菓子が週6日(日~金)営業。ジュピのえんがわの玄関からタタキが駄菓子コーナーだ。スペースはそんなに広くないが本格的な駄菓子屋だ。種類もたくさんある。冷蔵・冷凍庫もあって、ジュースもアイスもある。
毎週月曜が「パンの日」。パンは高橋さんが近くの「横浜パンの家」から仕入れ販売する。一日で70個くらいを仕入れ、その日のうちに捌く。注文も受け、配達も行っている。毎週木曜日が「新鮮野菜の日」。野菜を農家から仕入れ、販売する。氷取沢(磯子区)の農家3軒から野菜を仕入れ、重量野菜は近くの南部市場から仕入れている。これも高橋さんの担当だ。パンも野菜も余ることもあるが、その時はスタッフのみんなが快く協力してくれるということだ。

ケアプラザの協力を得て、何でも相談室や健康チェック等を行う。パソコン教室、レコード鑑賞会、映画同好会なども開催している。
横浜市では介護予防を目的とした住民主体の事業を募集している。当然ジュピのえんがわにも話しがあり説明会など何度か参加したそうだ。高橋さんからすれば、横浜市の補助金は魅力的だ。ジュピの家賃は月5万円だが、これを完全にカバ―できる。悩みに悩んだすえ、しかし応募は見送ったそうだ。「ジュピのえんがわ」は、地域に根づいて、地域の人々の共感と参加で、みんなが少しずつ力を出し合うことで成り立っている。市の総合事業受託は、このコンセプトから逸脱するのではないかと考えたということだ。
今年設立5年目を迎えた。大家さんと協議し、次の5年も契約することが決まったそうだ。新型コロナの影響が見通せない中で、ジュピのえんがわを継続していくことは簡単ではない。高橋さんの情熱と、一緒にこの場を盛り上げようとする大ぜいの仲間がいるからこそ、継続する意欲が湧いてくるのだと思う。
ジュピのえんがわは平屋の小さな一軒家である。みんなが使うスペースは、6畳・8畳の二間。南の庭に向かって、えんがわがあり、庭はウッドデッキだ。窓を開けると、心地よい風が抜ける。とても居心地のよいスペースだ。

(文・写真:大石)