2020年6月4日
「NPO法人ひだまりの森」は横浜市乳幼児家庭教育センターで相談に携わっていたメンバー4名が乳幼児を持つ母親、家族に相談、学習の場の提供しようと活動がスタートした。2006年4月よりNPO 法人ひだまりの森として横浜市男女共同参画推進協会「子育て期の相談事業」を受託、事業の終了を受け2010年4月からは自主運営の相談室として「ひだまりの森子育て期の相談室」を開設した。子育て期の母親の支援が子どもの健全育成に繋がると考え、相談を軸に活動する。特に相談の時間枠は設けず、年間1900件以上の電話相談を行っている。その他グループ相談、有料相談(予約制)、支援者研修、親子向けイベント等の企画も開催する。今回の緊急応援助成を活用した活動について理事長の林順子さんにお話を伺った。
新型コロナウィルス感染拡大により、子どもたちはもちろん、家族の生活のリズムが変化し、子育て期のお母さんの負担が増している。そのような中、NPO法人ひだまりの森では5月末までの期間限定(予定)で通常の相談に加えて別回線での相談を開始した。月曜日から木曜日の10時~12時、13時から16時で匿名制の無料電話相談を受け付けている。
学校が臨時休校になった当初は相談がパタッと止まったというが、緊急事態宣言以降は継続、新規共に電話が多くなったそうだ。日常であれば学校に通う子どもたち、仕事に出ている夫が家にいるという生活は、子育て期の家庭に大きな環境の変化をもたらしているという。相談に至る要因は複合的な場合が多いという。コロナも1つの要因だが、その手前で様々な課題を抱えている場合が殆どで、発達に気がかりのある子どもたちと過ごす母親、また母親自身に障がいがあったり(中には子育てをする中で自身の障がいに気づいたり)精神的な課題を持った家庭ではそれが顕著になっているという。一般的に乳幼児は保健師さんが対応してくれるが、学童期に入ると相談の受け皿がないと感じている人が多く、さらに夫の協力が得られないような場合ではますます母親が一人で辛さを抱えてしまうという。
林さんが相談に携わった2000年代前半の相談事業は専業主婦からの相談が主だった。女性の社会参画が進み、家庭から子育て期の相談へのニーズはいったん終わったかのように感じた時期もあったという。ところが相談のない土日の電話に、働く親から相談の場を求められていることを知り、そのニーズに応えようと土曜日の電話相談を開設、対応する支援者の研修や広報を行いさらに活動の幅を広げてきた。(第6期福祉たすけあい基金助成事業) また「子育て期」の範囲も広がり、乳幼児、学童期のみならず、中高生さらには20代、30代の子どもを持つ親や、中には50代の子どもを持つ80代の親からの相談もあるのだという。相談は横浜市内からだけでなく、各地の子育て支援センターに置いてもらったパンフレットを見た人、主催する研修でつながった自治体の方からの紹介等で県域に広がっている。「ひだまりの森は些細なことでも安心して相談できるところだから電話してみたら?と勧められて電話をかけてきた方もいます」と林さん。
「とにかく話してみませんか」とパンフレットに記載があるように、相談のベースは話を聞くこと。しかも「子育て期」というのがキーワードになっていて、この入り口をつくることで母親自身が悩みを相談できる。実際、相談の8割がお母さん自身の相談だという。朝一番の電話、夕方終了時刻間際にかかってくる電話、また、一見深刻そうでない電話の中に深刻な問題が潜んでいることも多く、電話の向こうの声に耳を傾ける。コロナ禍では子どもたちが傍らで過ごす中、母たちは不安な思いを発する場がなかなか作れないというのが実情だと林さんは察する。それでも僅かな時間を見つけて電話をかけてくれる人、明らかに背後に家族の存在が感じられる電話、子育て期の母たちの置かれている状況が深刻になっていると感じているそうだ。
「緊急事態宣言が解除されれば、さらに電話が急増するのではと思っています。」ひだまりの森のように小さなNPOへの電話相談は公的な相談機関等を巡りめぐって最後に辿りつく場合が多く、その段階で困りごとの整理がつかなくなっていることも珍しくないという。電話相談では一方的なアドバイスではなく、相談者自身の気づきや課題整理をサポートする役割を担っている。「私たちの考えていたことをさらに超えた解決策を相談者自身が見出した時は、鳥肌が立って嬉しさでいっぱいになりました」と林さん。
メールマガジンで第1次「新型コロナ対応緊急応援助成」の募集を知り、申請した。「今回の助成金では緊急な課題に素早く対応していただき、とても感謝しています」と林さん。事業の性質上、助成金が活動継続の基盤を支えている。「常に事業継続のことを考え、助成金だけに頼らず事業収入を得る努力をしています。私たちの相談事業のメリットは子育て期に関わる人たちの生の声、ニーズが常に拾えるということです。助成金を申請するのはそのようなニーズをおおぜいの方に知っていただけるとても良い機会だと思っています。」
活動立ち上げから関わってきたメンバーが今も運営に携わって基盤を固めつつ、新たなメンバーが相談の前線で活躍しているという。最近では元看護士など医療系のメンバーも増え、かつての相談者がスタッフとして関わるという循環も生まれてきているという。
取材:城田喜子(かながわ生き活き市民基金)
5月21日の午後3時前、藤沢市大鋸にある「第406号緑のひろば」に小学生とお母さんたちが三々五々集まり始めた。原っぱはテニスコート2面くらいの広さ。あいにくの天気で、しかも冷たい霧雨が時折降ってくる。それにも拘わらず、20人を超える子どもたちが自転車などで次々とやって来る。お母さんたちも15人を超えているだろうか。
雨除けのタープテントの下に折り畳み机をセットし、受付コーナーとお菓子の入った段ボールを広げる。3時を過ぎると、子どもたちが次々とノートに名前を記入し、気に入ったお菓子や食料品を受け取っていく。
このイベントの名称は「手等子屋(てらこや)わはは」。主催団体は、育ち合いひろばてとてとてだ。
(中央)代表の小川智子さん
(左)島根有利さん
(右)島口麻緒さん
てとてとての設立は3年前。青空保育に出会い「暮らしのいろいろ、子どもたちのあれこれ」に向き合い始めた一人の母親が読み聞かせボランティアメンバーたちに声をかけてスタートした団体だ。大鋸小学校区を中心に、こども同士、親どうし、親と子のふれあいの場づくりを行っている。
この日の手等子屋企画は、もう一つのプロジェクト「かさ地蔵」との合同開催だ。先ごろフードバンクかながわ(注)と出会って、おやつやおかず等の食料品の無償提供を受けることができるようになった。新型コロナ以降家に閉じこもりがちな子ども・母親たちにメッセージを送りたいと思ったという。代表の小川智子さんは4/27のフェイスブックでこんなことを言っている。「私はコロナの直接的な問題(感染)だけでなく、間接的な問題にも目を向けていく必要があると感じて、こんなときなのに、いえ、こんなときだからこそ、活動を続けている。」「てらこやを気に入って毎週来てくれたこどもたち、すっかり見かけなくなったあの子は今、どうしているのか。お家がわかるお宅には直接お届けする活動も行ってみようかなと思います。」
この発言から一週間後の5月3日、かさ地蔵プロジェクトがスタート。四日間毎日メンバー2名で、フードバンクかながわから提供を受けたお菓子(紅谷のくるみっこ/知名度抜群だそうだ)持参で戸別訪問開始、初日は14家族79名に会った。二日目、三日目、四日目と続け、なんと合計34家族178名に届けることができたそうだ。かさ地蔵は、今必要とされていることを、出来る事からやってみようというプロジェクトだ。しあわせをもたらすのは、ふれあう活動そのもの。訪問するてとてとてのメンバーはそのメッセンジャーだ。
初夏5月中旬に最高気温15度以下という凍えるような日に、50名を超える親子を集める力は、てとてとてのメンバーの行動力のたまものである。
実は遡ること3か月前、大鋸市民の家に、「てとてとて」の取材で訪問したことがある。メンバー4人とお助けスタッフ2人と懇談する機会を持った。全員が訪問した私たち市民基金のスタッフの目を見て、質問にキビキビと応えた。小さな居場所だけど、志が高く、みんなで議論し行動する姿に、民主主義の原点を見たような気がした。
まもなく設立丸3年を迎える。これからの活動に、おおいに期待したい。
取材:大石高久(かながわ生き活き市民基金)
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