新型コロナ対応緊急応援助成・第1次助成団体訪問取材②(みんなのレモネードの会、サテラ、須賀の寺子屋)

第1次助成団体訪問取材②(みんなのレモネードの会、サテラ、須賀の寺子屋)

一般社団法人みんなのレモネードの会

小児がん患児およびその家族を対象としたオンライン交流会

「みんなのレモネードの会」。爽やかで楽しげな名前の 団体は、小児がんの経験者の小学生(当時)とその家族、 仲間が「小児がんのことをもっと知ってほしい」「患児や 患児家族で繋がりたい」と2016年に活動を始めた。 2020年4月からは「一般社団法人みんなのレモネードの会」として、小児がん患児家族の立場から小児がん啓発活動、患児やその家族への必要な支援活動を行っている。

代表理事の榮島佳子さん自身も小児がん(小児脳腫瘍)患児家族。啓発・支援活動を通して小児がんを取り巻く環境改善を図りたいとの思いから、小児がん患児及びその家族を対象とした交流イベントの企画開催、小児がん支援のためのレモネードスタンドの開催、グッズ企画制作、講演活動などの事業を行っている。会の活動や今回の緊急応援助成に伴う活動について、電話取材でお話を伺った。

 榮島さんは生活クラブ組合員。「新型コロナ対応緊急応援助成」は生活クラブを通して情報を得て申請、助成金をオンライン交流会開催のための環境整備のために活用した。団体立ち上げ当初から行っていた交流イベントは、新型コロナウイルスの影響で対面での開催できなくなってしまった。そのような状況下で、感染への不安、治療や後遺症の不安を持ちながら、コロナ禍で過ごす孤立しがちな小児がん患児家族の支援を続けるために、交流イベントのオンライン化を進めている最中だった。

 患児きょうだい児のオンライン交流会には10~20人が参加、オンライン化を機に大阪、岡山等の遠方からの参加、また病棟からの参加もあり、これまでの対面での開催では参加できなかった方にも門戸が広がった。さらに、コロナ禍の中でもできることをカタチにしたいと始まった企画が「レモネードバトン」。SNSを通じてレモンやレモネード、家族写真や闘病中の写真、絵や工作など、伝えたい画像を投稿、次に投稿をお願いしたい人を指名し、メッセージのバトンをつなぐ企画だ。昨年より会が6月の第2週の日曜日を「レモネードスタンドの日」として小児がんの啓発・支援を伝える活動を行っていたが、今年のイベント開催ができなくなったため、会で相談して「レモネードスタンドの日」特別企画として6月1日から13日の間で開催する。

もう1つの企画が6月7日に開催予定のオンライン朗読交流会「ぼくはレモネードやさん」。小児がん経験者であり絵本の作者であるえいしましろうさんの朗読、同じく小児がん患児きょうだい児三人のピアノ演奏で開催される。絵本『ぼくはレモネードやさん』(生活の医療社)は小児がんを経験したえいしましろうさんが自身の病院での経験や同じ病気の子どもたちのお話を綴った紙芝居が2019年に絵本となった。(2019年神奈川県児童福祉審議会推薦優良図書に選出)こちらのオンラインイベントも小児がんを知る、患児家族が繋がる機会としておおぜいの参加を待っている。

「小児がんの子どもたちはたとえ治療が終了してもそれが終わりではありません。生きづらさを抱えていることも多く、だからこそこれまでも繋がる場づくりをやってきました。このオンラインの企画が進んでいけば、コロナ終息後も病棟や自宅療養が続く子どもたちとの交流支援が継続できると考えています」と榮島さん。現在は夏の暑さに弱い小児がん患児たちにマスクを届ける「夏マスクプロジェクト」がマスクづくりのボランティアとともに進行中だ。コロナ禍の中で今できることを模索し、一つまたひとつとカタチになっていくことに大いに期待したい。

電話取材:城田喜子(かながわ生き活き市民基金)


特定非営利活動法人サテラ

サテラの或る一日

8:25

5月30日(土)午前8時25分、JR橋本駅でNPO法人サテラ(以下サテラ)のお二人と待ち合わせをした。サテラは生活困窮者支援を行うNPOだ。設立は平成29年6月。理事長の庄田浩之さんは、食品流通関連会社に長く勤め、その後生活困窮者支援の仕事(無料低額宿泊所・自立中間施設のNPO)にも携わった。その時初めて生活困窮者の実態に接し、ショックを受けたという。現在は配送関連会社に勤め、週5日夜勤の仕事をしながら、サテラの活動を行っている。 サテラの取材のキッカケは、今回の助成申請理由にあった「相模原市青少年相談センターと連携した生活困窮者に対する食品提供活動」だ。
特定非営利活動法人サテラのHP ho-muphttp://npo-satella.or.jp/ はこちらから

行政・学校・市民団体の連携による食支援活動は、新型コロナをキッカケに県内の幾つかの自治体で取組まれている。相模原市ではスクールソーシャルワーカー発で学童保護者に「子どもの食支援情報」を発信した。行政(青少年相談センター/スクールソーシャルワーカー)と市民団体が連携し、学校とも協力して、生活困窮にある家庭への支援に取り組んだ。

8:35

 最初の訪問先は共生食品㈱だ。共生食品は生活クラブ生協をはじめとする首都圏の生活協同組合と提携している生産者だ。豆腐をはじめとする大豆加工品、焼きそば・餃子の皮等も人気消費材だ。共生食品㈱はサテラに週2回、豆腐・厚揚げなどを寄贈している。

 今日食品を届ける支援先は4件。スクールソーシャルワーカーからの要請が1件、青少年相談センターが小学校を通じて呼びかけた食支援情報を見たというひとり親家庭が2件だ。そして高齢者の居場所「にぎわい処」を行う光が丘高齢者支援センターだ。

9:00

 1軒目の支援先は中学校のお子さんがいる家庭。母親は精神の障がいを持っている。スクールソーシャルワーカーからの依頼で、今回は2回目の支援だと言う。共生食品から寄贈された豆腐類とフードバンクかながわからの寄贈食品を持って、訪問宅の母親とコトバを交わしながら、近況を聞き取る。サテラでは食品だけでなく家電や子供服などのリサイクル支援を行っている。どうやら前回は子供服を持ってきたようだ。何か必要なものがあれば連絡を!と話し、食品の受け渡しが終わった。

個別支援の際は、出来るだけ二人体制で行うようにしている。トラブルの未然防止のための配慮だという。また食料を持って最初に訪問した際、家の中がゴミ屋敷状態で、まず片付けが最初の支援ということもあったという。

9:25

2件目の支援先は、シングルマザー宅だ。小学校5年を頭に4人のお子さんが居る。小学校のホームページで食料支援が受けられることを知ったという。5/27(水)に庄田さんの携帯に電話、豆腐類の寄贈があるので5/30(土)の配達となったそうだ。

9:45

3件目の支援先もシングルマザーの家庭だ。小学生が二人と双子の4歳児の4人のお子さんが居る。ダブルワークで生計を維持しているが、仕事の一つが5月から休業となったそうである。本人からの依頼ではなく、友人がサテラに相談、今回の支援につながったという。

9:55

今日の最後の配達先は光が丘高齢者支援センター。光が丘地区社協がここを拠点に高齢者の居場所「にぎわい処」を運営している。普段は食事を提供しているが、新型コロナ以降お弁当提供に活動を切り替えた。サテラは「中間支援活動」として子ども食堂や居場所への食品提供・配送を行っているが、多くの子ども食堂が活動休止の中で「にぎわい処」は活動を継続している。

サテラのミッションは『生活困窮者の問題は、行政だけでなく、地域社会全体で取り組むべきテーマ』という思いに支えられている。代表の庄田浩之さんは、経済的には安定している会社勤めを辞め、生活困窮者支援のNPOを立ち上げ、日々支援活動に取り組んでいる。

相模原市社協は生活困窮者支援団体応援助成を行っている。フードバンクへの社協助成は相模原市だけだ。1団体上限30万円、主に倉庫賃料やガソリン代に限った費用助成だ。また自治体がフードバンク支援を行っている例は、横須賀市が神奈川フードバンク・プラスに業務委託(配送)しているのが唯一の例ではないか。フードバンクへの行政支援は殆ど無いのが実情だ。

『サテラの或る一日』で触れたように、生活困窮者への食料支援活動にとって、賃料・燃料費など固定費用はほんの一部なのだ。生活困窮者に寄り添う活動でむしろ大事なのは相談(話を聴く)の時間であったりするし、そもそも個別支援は、相手に合わせる活動なので、時間が幾らあっても足りないという面がある。県内に10を超えるフードバンク団体があるが、どの団体も“身銭を切って”活動している。食支援が社会政策として自治体の政策にキチンと位置づけられる必要がある所以であり、財政支援が求められる所以である。

サテラ取材は、わずか1時間半の同行取材であったが、庄田さん・渡邉さんの人柄に触れることができ、有意義な時間を過ごすことが出来た。 財団として支援できることは限られているが、地域の中でフードバンクが果たしている役割を、様々な形でおおぜいの市民の中で共有し、フードバンクという「社会的共通資本」が学校や図書館・公民館と同じように、当たり前に地域の中にある、そんな社会をめざしていきたい。

※ 市民基金が運営にも参画している「フードバンクかながわ」は2019年度に研究会を設置し、その成果を『フードバンク政策研究会報告書』としてまとめています。ぜひお読みになってください。
『フードバンク政策研究会報告書』はこちらから

取材・文:大石高久(かながわ生き活き市民基金)



子ども学習支援グループ須賀の寺子屋(平塚市)

地域と共に取り組む学習支援活動 ~学習意欲のない子どもはいない~>

須賀の寺子屋のある平塚市の港地区は、比較的裕福な家庭が多く、貧困家庭層は少ない地域である。須賀の寺子屋は、2016年に、地域の4人の保護司と平塚地区更生保護女性会、平塚地区BBS(Big Brothers and Sisters Movement)会などが中心となって立ち上げた団体である。人生に躓いた人の多くは、青少年期に非行や犯罪などに陥る人が多いことから、青少年期こそが人生で大切な時期であると捉え、小中学生への学習支援活動を始めたのが動機である。今回は、活動の様子やこの助成の内容について、代表の大野文さんにお話を伺った。

活動は、市立太洋中学校と連携(共催)して、月に2回、小学生は放課後、中学生は夜間に、学校の宿題や授業の補修など、個別にサポートし、一人ひとりの子どもに寄り添う学習支援活動を行っている。太洋中学校とは、活動場所の提供と生徒の募集などを共に行っている他に、教育相談コーディネーターの協力で、生徒の学習支援状況の記録を学校へ提出し、教科担当教諭からの助言・指導も得て活動に活かしている。

スタッフの構成は高校生、大学生から大人までと多様であり、その中でも元教員や定年退職後の高齢者も多いのが特徴である。その他、病後の方や心の病による引きこもりがちになっている方など、社会復帰を目指している方も少なくない。

 また、平塚市内のネットワークづくりにも積極的で、ひらつか子ども学習支援ネットワークを設立して活動している。さらに、須賀の寺子屋の活動から2つの寺子屋(八幡宮の寺子屋、金目の寺子屋)を生み出している。

 現在は、新型コロナウィルスの影響による緊急事態宣言により、小中学校は休校となり、寺子屋も対面での学習支援活動は休止している。そのため、教材配付や課題添削、オンラインでの学習支援を行っている。タブレットが準備できるまでは各自のパソコンやスマホを利用してきたが、通信機材を準備できない家庭の生徒への支援が思うように進まなかった。そこで、タブレットを購入し、Zoomを搭載してオンライン学習を行うことでできるだけ多くの生徒に対応できるようにと考えた。先ずは、高齢者を含むスタッフが、パソコンや、タブレットの操作ができるようになることは必須である購入したタブレットは、主に、子どもへ貸与(一部はスタッフ用)され、準備が整い次第オンライン学習を開始する。

また、今回のオンライン学習を定着させることにより、従来の月2回の学習支援活動との両立体制を目指していくとのことである。オンライン学習が定着すれば、活動エリアを広げることや、近隣以外のスタッフ(ボランティア)の参加も可能となる。このように地域に根差した活動を通して、平塚市全域に支援活動が広がっていくことを目指して、今後も活動していきたいとのことであった。

取材:土屋誠司(かながわ生き活き市民基金)